ゆったりフォト紀行 

冬のナイヤガラ


寒さを我慢しても
この光景は見る価値がある
昼は男性的で力強く 夜はロマンチックで女性的
それが冬のナイアガラの魅力だ

写真・文 北奥耕一郎
         

 ナイアガラが凍ると聞いていたが、冬に滝の裏側に入れるとは知らなかった。カナダ滝の裏側に掘られたトンネルを通り抜けて、展望が開けたとき「おおー!」と声を上げてしまった。氷の間から地響きを上げて流れ落ちる滝が輝いて見えたのだ。
 これまでに見てきた日本の滝は、高さは結構あるが水量がそれほどないので凍ることを不思議に思わなかった。ところがこの滝は違う。カナダ滝は高さ56m、幅675m。並ぶアメリカ滝も高さ56m、幅320mとバカでかいのだ。
 とはいっても滝全部が凍るわけではない。ご覧の通り、凍るのは日陰部分で、日当たりの良い所は轟々と勢いよく流れ落ちている。スケールが大きいだけに迫力もすごい。


 このような冬の滝を見にくるのはカメラ好きばかりかと思ったが一般の観光客も来ており、滝をバックに記念写真を撮っていた。ここはいまだに人気の観光地らしく、日本人並みに写真を撮っている。凍った滝は彼らでも写したくなるのだろう。
 「 Look out ! (危ない!)」
 老婦人に叫ばれてハッとした。少しでも高い所から写そうと氷の上に登って撮影していたのだがよく見ると滝壷まで一直線。万一滑ったらオシマイである。以前日本の山で命拾いしたことを思い出し、注意してくれた老婦人に感謝しながら下山(?)した。


 夜のライトアップに再度訪れた時にはさすがに観光客はいなかった。撮影を始めて10分もするとシンシンと冷えてくる。寒さで指先の感覚が鈍くなる。無理をせずに暖房の効いた建物に入り、体を温めてから再び外に出る。ライトに照らし出された滝はロマンチックだ。


 滝から北へ20数キロの所に19世紀のたたずまいを残している町、ナイアガラ・オン・ザ・レイクがある。開拓時代のスピリットが生き続け、文学の香りあふれる魅惑の町だ。白い息を吐きながら走る馬車に乗って町を巡ると、タイムスリップしたようだ。雪で覆われた古い町並みも風情があっていい。
 冬はオフシーズンだが、雪や氷など他の季節には見られない情景をゆっくりと見ることができる。料金も安いのでカメラ好きでなくても個性的な旅が好きな人にはオススメだ。

(情報誌フルフル第2号より転載)